Adobe Illustratorとの格闘の歴史を語ろうか

僕はイラストのほとんどというかすべてをAdobe社のIllustratorというソフトで描いています。このソフトはあえて紹介しなくてもいいほどベクタードロー系ソフトの代表格ですが、僕とIllustratorとの出会いは今から20年ほど前にさかのぼります。

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Adobe Ilustratorとの出会い

その当時はデザイン業界にMacintoshが普及しはじめたぐらいの時期でした。今なら「MacといえばApple」と誰でも知っていますが、当時のMacパソコンはデザイン関係の人たちが使う特殊なパソコンというイメージでした。

広告業界ではDTP(デスクトップパブリッシング)という言葉が使われはじめ、それまでアナログだった印刷物の版下制作をコンピューターで行えるようになりました。切ったり貼ったりのアナログなデザイン版下製作が画面上で出来てしまうということでとても感動しました。そのデザインレイアウトをするためのソフトとして使っていたソフトがAdobe Illustratorでした。でしたというか今現在も仕事の広告物制作で使っていますので、長い付き合いのソフトウェアです。

僕が初めて使った時のバージョンはIllustrator 5.5でした。その後バージョンアップを重ねて様々な機能も追加されましたが、ベジェ曲線と呼ばれる点と線でオブジェクトを描画していくとてもシンプルなベーシック部分は昔も今も変わっていません。様々な機能が追加されてもパソコン音痴の僕がこのソフトを使い続けられるのは、このシステムが変わっていないからだと思います。

ベジェ曲線 - Wikipedia

Ilustratorでイラストを描き始めた経緯

印刷会社に入社したばかりの僕は、初めてIllustratorというソフト名を聞いたとき「これはイラストを描くためのソフトだな」と認識しました。それは間違いではないのですが、デザイン業界においてIllustratorはチラシやポスターなど印刷物の版下データを作るためのレイアウトソフトとして主に使われていたので、Illustratorでイラストを描くことは、その当時あまり行われていなかったと記憶しています。当時Illustratorを駆使して描いたイラストを同僚デザイナーに見せたら「随分器用なことしますねぇ」と驚かれたことがありました。

Illustratorを〝イラストを描くためのソフト〟と認識していた僕は、デザインのかたわらプリミティブな図形を組み合わせてイラスト作成をしていました。最初のころは独特な描画形式に「どうやって絵を描くんだろうか?」とかなり戸惑いました。

簡単なイラストなら描けるように

仕事でチラシやパンフレットなどのデザインをしていると、レイアウトの関係でスペースにイラストが必要になることがあります。そんな場合にフリー素材などで都合のいいものがあればいいのですが、無い場合には自分で作成しなければなりません。そんな時に僕は、ペン書きしたものをスキャニングして画像ソフトで色を付けて使用していました。しかし、このやり方では時間がない時や書き直しがあった場合に時間がかかりとても面倒なのが問題でした。

2000年ごろ描いていたイラスト

2000年ごろ描いていたイラスト

イラストをIllustratorで作成できれば時間も短縮できる上に修正も簡単に出来るので、なんとかうまく描けるようにならないものかと研究と実験を重ねて簡単なイラストならマウスでなんとか描けるようになりました。ちょうどその頃、Mdnやdesign plexなどのデザイン誌でもIllustratorでのイラスト作成記事がよく掲載されていたので、そんなものを食い入るように見て参考にしたりしました。

Illustratorで描くイラストの問題点

Illustratorでイラストを描くときのメリットのひとつに色塗りの楽さが上げられます。アナログイラストなら彩色道具で色を付けなければならないのですが、デジタルであれば素早くキレイに色塗りができますし手も汚れません。イメージが違えば変更も簡単です。僕は色塗りがとても苦手だったのでモノクロイラストばかり描いていましたが、デジタルに移行してやっと色塗りの苦手意識から脱却することができました。

色塗りの苦手意識から解放された僕はカラーイラストをよく描くようになりましたが、ある時壁にぶつかります。Illustratorは点で囲まれた面でイラストを構成していきます。この面に色を付けていくのですが、面に塗られる色はフラットです。単純なイラストであればフラットな色付けでも問題はないのですが、ちょっと複雑な立体感のあるイラストを描く場合にはどうしらたいいのかで悩みました。

試行錯誤の末たどり着いたのが〝グラデーション〟です。Illustratorには「グラデーションツール」があり簡単にグラデーションをかけることができます。これをうまく駆使すれば立体感の表現ができると考えた僕は、グラデーションを多用したイラストをよく描いていました。

グラデーション多様期のイラスト

グラデーション多用期のイラスト

デジタルのグラデーションはとてもきれいなのですが、逆にキレイすぎて違和感があったのでなにか違う表現で立体感を持たせることができないかを考えるようになりました。当時はIllustratorでイラストを描く人も増えてきて簡単に使えるグラデーションツールを使った安っぽいアルミのようなイラストがあふれていました。

アニメのセル画を参考に

Illustratorのグラデが不自然ならばということで、イラレイラストをPhotoshopに書き出してからブラシで陰影を付けてみたりもしてみましたがいい感じには仕上がるものの、手間と時間がかかることと、修正のできるベクターイラストではなくなってしまうので、このやり方はペイント風に仕上げたい時にしか使わなくなりました。

イラレでベースを作りPhotoshopで仕上げたイラスト

イラレでベースを作りPhotoshopで仕上げたイラスト

いろいろ試してみてIllustratorですべて完結できるイラスト作成のために参考にしたのは、面で立体表現をするアニメのセル画の描画法です。色を付けるポイントや色味など、グラデーションを使わずに立体感を表現する方法は日本のアニメがとても参考になりました。当時流行っていた『新世紀エヴァンゲリオン』なんかをよく見ていました。

アニメタッチで仕上げたイラスト

アニメタッチで仕上げたイラスト

まとめ

Adobe Illustratorでイラストを描くようになってから20年近く経ちます。最初は違和感のあったこの描き方も今ではこれでしかイラストが描けないほどです。今までIllustratorで数千点のイラストを描いてきましたが、まだまだ満足いくレベルではありません。このソフトは突き詰めていけばもっと素晴らしい表現ができると感じています。

とはいえソフトはあくまで描画ツールでしかないので鉛筆や筆と同じく、大事なことは何で描くかではなく何を描くかということなのですね。

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