Adobe Illustratorでイラストを描くときにやっていること①

今回は、僕がAdobe Illustratorでイラストを描くときのテクニックを紹介します。僕のイラストタッチは漫画のようなクッキリとした線が特徴です。これは僕が漫画家志望だったことと若い頃に見たジョン・テニエルの『不思議の国のアリス』の挿絵の世界観への憧れなどがベースになっているのではないかと思います。

Category:John Tenniel's illustrations of Alice's Adventures in Wonderland - Wikimedia Commons

ジョン・テニエルの不思議の国のアリスの挿絵は、デフォルメと絵の粗密のバランス、文章を補完する挿絵としての世界観が完璧でいつ見てもゾクゾクさせられます。

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線に生命観を与える

Illustratorで線を引くと始点から終点まで太さが均一な線になります。車や日用品などのイラストを描く場合にはフラットな線のままでいいのですが、人物や動物などを描く場合にはメリハリのない印象になってしまいます。

コルベット線画

Illustratorでイラストを描き始めた頃は、このフラットな線がどうにも気になっていました。漫画を描くときに使うカブラペンで描いたような抑揚のある線が好みだったのでIllustratorでこれを表現できないかと考えました。試行錯誤してたどり着いたのがベースイラストをフラットな線で描き、そこから線をアウトライン化してチマチマと抑揚を付けて仕上げていくというやり方です。

この作業をする前にイラストの線と塗り部分を分離しなければなりません。手順はちょっと面倒ですが、線の加工だけでなく塗りにも必要な工程なのでご紹介します。

線と塗りの分離手順

①フラットな線でイラストを描く

Illustratorのイラストは、線で囲まれた面の組合せで構成されます。それらを重ね合わせながらイラストを描画します。なので見えない部分にも面や線があります。ここから線と面を分離して見えている部分のみの線を抽出します。

②全体を選択して線をアウトライン化する

イラスト全部を選択した状態で[オブジェクト]→[パス]→[パスのアウトライン]で線をアウトライン化します。これで面と線が分離しましたが、グループ化されているので[オブジェクト]→[グループ解除]でバラバラにします。

③線データのみを選択してロックする

線のカラー(今回は黒K=100)を選び[選択]→[共通]→[カラー(塗り)]で同色をすべて選択してから[オブジェクト]→[ロック]→[選択]でロックします。

④塗り部分をコピーする

ロックされた線以外の全てを選択すると分離された塗り部分が選ばれます。それを[編集]→[コピー]します。次の工程で塗り面が分割されてしまい後の塗りの編集に支障が出るので現状保護のためにクリップボードにコピーしておきます。

⑤全てを選択して[刈り込み]で見えている線を抽出

[オブジェクト]→[すべてをロック解除]してから全選択をして[効果]→[パスファインダー]→[刈り込み]をかけます。これにより重なって見えない部分はカットされ見えている部分のみとなります。

⑥線色を選択して[合体]で線が抽出されます

再び線のカラー(今回は黒K=100)を選び[選択]→[共通]→[カラー(塗り)]すべて選択された状態でパスファインダーパネルの[形状モード:合体]で線部分を統合します。これで見えている線のみが抽出されました。この線は新規レイヤーに移動しておくと管理が楽です。

⑦塗り面を消してクリップボードにコピーした塗り面データをペーストする

抽出された線データは、新規レイヤーに移動させてロックします。残った色面データは不要なので消してしまい、④の工程でクリップボードにコピーしていた色面データを同位置ペースト[オブジェクト]→[同じ位置にペースト]します。

これで線データと色面データが分離されました。なんか複雑な手順でわかりにくいかもしれません。もっといい方法もあるのかもしれませんが僕のIllustratorでのイラスト制作において仕上げ前にこの加工は欠かせないものです。

線の入りと抜きを意識する

線と塗りの分離が出来たら、それぞれをレイヤーに分けて管理します。線の加工をするので塗りレイヤーはロックします。漫画の線の基本は「入り」「抜き」です。この入りと抜きをIllustrator上でシミュレートすることによってイラストに生命観を持たせることができます。

具体的な作業としては、パスを削除・移動して線の端を尖らせるようにしていきます。この際、先ほど上げた入りと抜きを考えながら太さの強弱もつけていきます。

加工前

均一な線のパスを入りと抜きを意識しながらひたすら移動させていきます。地道な作業ですが、これは漫画の『ペン入れ』のような作業です。線に抑揚が付くとイラストに生命感が出てくるので僕はこの作業が楽しくて好きです。

加工後

加工後

まとめ

Illustratorは非常に素晴らしいイラスト描画ツールですが、ベクターソフトなので仕上がりが硬くなってしまいがちです。最近では、ペンタブレットの筆圧感知に対応してペンのような線が描けるようになったり、IllustratorCSでは線幅ツールで線幅をいじれるようになっています。昔に比べて簡単にイラストタッチの幅を出せるようになってきていますが、僕はこのやり方が一番自分の好きなタッチを出しやすいようです。

また研究を進めていけば新しいやり方を編み出せるかもしれません。Illustratorはあくまでイラストを描くためのツールなので自分のタッチを出せる方法を追求してみるのはなかなか楽しいものです。

ちょっと長くなりましたが何かの参考になればうれしいです。

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