アメリカのテレビドラマ『The Walking Dead(ウォーキング・デッド)』は2010年から放送されている異色のゾンビ物ドラマシリーズです。現在はシーズン7が放送中で、グロ・ゴア表現満載のホラーテレビドラマがこれだけ続くというところにこのドラマの根強い人気とアメリカ人のゾンビに対する深い愛を感じます。
このドラマはゾンビパニックをベースに人類の生き残りをかけたドラマが展開されるという、ゾンビ映画をそのまま長編ドラマ化したゾンビマニアにはたまらない作品です。映画ではせいぜい2時間程度ですが、シリーズが続く限り延々とゾンビサバイバルが展開されていくというまさに悪夢のようなテレビドラマです。
ウォーキング・デッドの魅力
僕は数年前にこのドラマをネットニュースで知ったのですが、ちょうど動画配信サイト「hulu」で観られることを知り登録して見始めました。このドラマの一番の魅力は、なんといっても妥協無きゾンビ描写です。突然世界がゾンビ化するというのがゾンビパニック物の基本ですが、このドラマもそこから物語が始まります。
人の多い都市部にゾンビが発生し、瞬く間にゾンビが溢れかえり阿鼻叫喚の地獄絵図が繰り広げられます。主人公である保安官のリック・グリムスはこのゾンビ世界で生き抜くために世界を彷徨い始めます。家族と共に信頼できる仲間を得ながら、当初は対ゾンビ戦が主流ですが、やがて荒廃した世界の中で生きている人間が最大の敵となってリックと仲間達を絶望の淵へと追いやります。
ストーリーの骨格は従来のゾンビ映画を踏襲したものがベースになっていますが連続ドラマなので、じっくりと人物や人間関係を描くことによって視聴者の登場人物への感情移入が深まります。ゾンビ映画のお約束でもある〝無慈悲〟はこのドラマにもしっかりと継承されているので、ちょっとした端役であろうが主役級の登場人物であろうともサックリと死にます。相手はゾンビなので、説得も賄賂も泣き脅しも通用しません。子供であろうが女性であろうが老人であろうがバリバリいかれます。
この無慈悲展開こそがこのドラマの最大の魅力であると同時にウィークポイントでもあります。詳しいことはネタバレになりますので書きませんが、このドラマは心して見ないと危険です。特にドラマの登場人物に感情移入しやすい人はかなりメンタリティを削られますのでご注意ください。1シーズンに2、3個はメガトン級の鬱展開が起こります。
極限状態のヒューマンドラマ
対ゾンビであれば、壁を作って仲間と閉じこもり自給自足生活を送っていれば、それほど脅威はないはずです。しかし、無政府状態で混沌とした世界になれば、生きるため食べるために暴力を用いる人間が出てきます。ドラマの舞台であるアメリカは銃社会なので、盗賊集団も当たり前のように重武装です。この世界で生き残るためには、凶暴なゾンビと重武装したバンデットと戦い抜かねばならないという無理ゲー状態です。
ドラマでは主人公のリックは、様々な困難を乗り越えながらコミュニティを作り絆を深めていくのですが、人が増えれば様々な考えを持つ者がいて衝突や裏切りが絶え間なく起こります。日を追うごとに増えていくゾンビにも警戒しなければなりません。食糧や身を守るための武器、定住できる場所の確保もしなければなりません。しかし、定住しようとすれば略奪者に狙われ移動すればゾンビの大群に襲われる、新しく出会った人達を信じれば騙されて身ぐるみ剥がされるという地獄のサバイバルが繰り広げられ、見ているこちらも気が休まりません。
そんな中にも恋愛や家族、親子、兄弟など愛のちょっとした癒しの展開もあるのですが、大抵はその後に地獄に突き落とされるような展開が待っているので気を抜いていると大変なダメージを受けます。ウォーキングデッドはゾンビホラーというジャンルでありながら、死者と生者、正義と悪、愛と憎しみという対立構図から醸し出される究極のヒューマンドラマでもあります。
万人にオススメはしませんがゾンビ好きなら見るべき!
「ゾンビ」というキーワードで検索してこのブログに来た方であれば、少なくともゾンビに対する興味があるのではないかと思います。ゴアやグロ表現はある意味慣れで何とかなる部分ではありますが、テレビドラマであるが故に数十話も見続ける内に登場人物に感情移入してしまうのは避けられません。そんな好きになったキャラクターが、何の脈絡もなく残虐に死んでしまう不条理はどんなに訓練してもすんなり受け入れられるはずありません。
登場人物が不条理に死ぬのはゾンビ物ではお約束です。映画であれば、衝撃的なオチとしての演出であってもこのドラマでは、重要人物の死後も話は進んでいきます。いつしか、仲間達の死を受け止め想い出を抱えながら絶望の世界を生きていく人達と共に、視聴者である私たちも地獄を光を求め彷徨うような心境になってきます。そんなドラマですのでメンタルの弱い人には到底オススメできません。
現在huluでは、ウォーキング・デッドのシーズン1から6までの全話が視聴できます。最新のエピソードシーズン7は毎週金曜日に一話配信中です。
まとめ
先日シーズン7の第一話を観ました。各シーズンごとに衝撃を受ける展開があり、その都度何とか持ちこたえてきましたが、この回ほど衝撃を受けたことはありませんでした。僕があの世界の一員であれば、精神が崩壊してしまうほどの絶望感を受けたと思います。たかがドラマですが、それならもっと都合のいい展開にできたはずですが、そこがこのドラマのポイントで不条理ここに極まれりです。ドラマでこんな気分になったのは初めてです。面白くてオススメです!とは言えませんが、死んだ方が楽というほどの絶望のゾンビ世界にどっぷり浸かりたいという方は是非ご覧になってみてください。
いつ終わるのか分かりませんが、僕もこの世界がどんなハッピーエンドを迎えるのか見届けたいと思います。
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