僕は、静かに降り積もる雪の中を歩くのが好きです。空気を含んだ雪は天然の防音装置となりあらゆる音をかき消すので、自分の踏みしめる雪の音だけしか聞こえなくなります。目に見える何もかもが真っ白の無音世界というのは、とても幻想的なものです。
雪のある日常
僕の仕事はデスクワークなので、家と会社の往復だけでほとんど運動する機会がありません。夏は自転車通勤で汗をかけますが、冬は自転車に乗ることができないので、会社から駅までできるだけ歩くようにしています。片道3㎞ほどの道のりは、考え事をしながらウォーキングするにはちょうどいい距離です。
積雪が10㎝を超えると、足に雪が絡んで歩きにくくなります。これが20㎝を超えると足が埋まってまともに歩くことは困難になります。東京で積雪があると全国ニュースになるほど大騒ぎになります。転倒により病院に搬送される人がいたり、スリップによる車の事故も多発し、交通機関はマヒしてしまいます。
僕の住む札幌では積雪対策がしっかりしているので、ある程度の雪が降れば、線路や車道など公共交通機関を中心とした路線は除雪車が除雪します。歩道も通学路を中心に深夜から早朝の間に除雪され交通機関がマヒ状態になるようなことはほとんどありません。
消える世界
ここ数年というか僕の子供の頃に比べると、格段に降雪量は減っている印象なのは温暖化の影響なのか、単純に子供時代の想い出補正なのかはわかりませんが、それでもこの時期は積雪量はピークになり街は白銀の世界になります。
どんなに雪が降り積もっていてもあと二ヶ月もすれば、この白い世界は、まるで魔法のように消えてしまいます。生まれたときから何十回も目にしてきたことですが、いまだに不思議なものだと感じます。
その日は、深々と降り積もる美しき絶望の世界を駅までではなく家まで二時間かけて歩きました。
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