暇なときにゾンビについてあれこれ考える時間は楽しいものです。僕の頭の中には日本ゾンビ学会があり、僕は学会の一員で、そこではゾンビに関するさまざまなことが議論されています。
長年の議題のひとつに「ゾンビはなぜ人を襲うのか」があります。
- 人を食べるため
- 凶暴性の暴走
- 感染を拡大させるため
というようなことが考えられますが、実際にゾンビ化した人間との意思疎通は難しく、何のために人を襲うのかということは予想の範囲を超えませんが、これらの複合的な理由から人を襲うのではなかろうかというのが今のところの見解です。
ゾンビのエネルギー源
いくつかの事例でゾンビが人を食べたということが報告されています。食べていたということは、ゾンビは空腹を満たすために人を襲い殺しているということが考えられますが、空腹を満たすために肉が必要なのであれば人である必要はなく、牛や豚などの家畜や場合によっては共食いでもいいはずです。
ゾンビの定義は、心停止後、脳死に至った人間がウィルスか病原菌など何らかの原因により脳の活動が再開して動き出した状態というものです。活動が再開した脳はかなり原始的な部分のみが動いている状態で、思考も会話も痛覚も代謝もありません。最低限の血液やリンパ液などの循環はあるようなので、行動するために必要な足や腕の筋肉を動かすことはできますが、内臓は活動していないので、お腹も空かず喉の渇きもないはずです。
では彼らは何をエネルギー源として活動しているのかということが問題になるのですが、おそらくこれは、生前に蓄えられた脂肪や筋肉など自らの身体からエネルギーを得ているのではないかと考えられています。
内蔵が活動していないので食事によるエネルギー補給はできません。しかし活動はしているので自らの筋肉・脂肪からエネルギーを作りだしています。彼らは人ではなく自分自身を食べている状態にあるので、徐々に痩せ細り最終的にはエネルギーが尽きて活動停止至るのではないかと思われます。
人は水分や栄養を摂取をしなければ一週間から十日で死にます。これはあくまでも呼吸や代謝など活発な生命活動のある生きている人間のデータなので、死者であるゾンビが水分や栄養補給の無い状態でどこまで活動できるのかというのは詳しくはわかりませんが、生者の時の栄養状態により数週間から数か月ぐらいまでは活動できるのではないかと思われます。
なぜ人を襲うのか
では、食べるためでないのになぜゾンビが人を襲うのか、一番説得力のある説は〝感染の拡大〟だと思います。これはゾンビ化がウイルス感染によって引き起こされているものと仮定した上での仮説ですが、人がゾンビに噛まれると大量のウィルスが体内に入ります。ゾンビウィルスは宿主の脳を侵して死に追いやると同時に、何らかの方法で脳の運動を司る部分を掌握し、生きている人を襲わせます。感染を媒介するのはゾンビの体液なので、とにかく生きた人間の体内にゾンビの体液を注入し大量のウィルスを送り込むことができれば感染を引き起こすことができるのです。
もし襲った人間を食べているのであれば、新たなゾンビを作り出すことはできずに自滅してしまいます。ゾンビの恐ろしさのひとつは“無限増殖”であり、生者がいなくなるまで感染を拡大し続けるというパンデミックも忘れてはいけない要素です。
以上のことからゾンビは食べるために人を襲っているのではないと考えられるわけですが、ゾンビが人を食べているという描写もあることは事実です。日本ゾンビ学会の見解は、ゾンビの最大の武器である噛むという行為が〝食べる〟という人間の本能的な部分を刺激して条件反射的に食べてしまっているのではないかと考えています。
まとめ
ゾンビは執拗に生者に襲いかかります。ゾンビは呪術で動いているといわれていた時代には、全てを失った死者が生者に対する強烈な恨みを持ち襲うと考えられていました。しかしゾンビには恨みや怒りのような感情はありません。彼らは死者なので〝無〟の状態にあるのです。
無の状態にある死者を操り生者を襲わせる存在がウィルスなのか病原菌なのか、それとも本当に呪いなのかはっきりとした結論はまだ出てはいませんが、ゾンビ同士がお互いを襲い喰いあわないという点において、ゾンビが食べるために人を襲っているという説は弱いのではないかと僕は考えています。
このように僕は、実在もしないゾンビのことをあれこれ妄想するのが大好きです。実在しないものなので、人それぞれの解釈で楽しめる懐の深さもゾンビの大きな魅力です。日本ゾンビ学会では、まだ他にも色々なゾンビに対する考察がなされていますので、そのうちまた発表いたします。
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