[不定期連載/日記小説②]蚊

また首筋の裏を蚊に刺された。

うなじのあたりを、今年は三ヶ所も刺されている。

公園で筋トレをするようになって約一年。昨年の秋頃からはじめて冬の間も続けた筋トレは、寒さとの戦いだったが体を動かすことでなんとか乗り切れたが、夏に入り気温が上昇してくると、寒さに変わり新たな敵が出現したのであった。

公園でのトレーニングは、遊具で遊ぶ人のいなくなる時間帯に行う。そうなると必然的に日没後に開始することになるのだが、この時間帯は最も蚊の活動が活発化する時間帯でもある。さあ夕食の時間だと腹を空かせた吸血鬼がウヨウヨいる場所にトレーニング用の軽装で乗り込むのだから格好の餌食である。

まだ体の前面にまとわりついてくれば、こちらとしても迎撃体制を敷くことも可能ではあるが、背面特に肌を露出している首筋に貼りつかれては視認することも検知することもできないのである。まさに灯台下暗し、首筋裏は人間にとってのウィークポイントなのである。

思えば、僕は蚊に対しては昔から少なからぬ関心があった。

小学校の高学年のころだったか夏休みの自由研究の題材として蚊を選択したことがあって、図書館でいろいろと調べたことがあった。その時に知ったことは、血を吸うのはメスのみであること蚊は吸血の際に血液凝固を防ぐために唾液を注入してアレルギー反応を引き起こしこれが痒みの原因となるということであった。

普段は樹液や花の蜜など吸っている蚊がどのような経緯で動物の血液を吸うに至ったのかは定かではないが、メスのみが吸血するということから産卵のための栄養補給のためということらしいのだがこの進化の選択ははたして正しいものだろうかといつも考えてしまう。

他の生物の血を吸いにいくということは叩き落とされるリスクのある非常に危険な行為である。蚊が血を吸うように進化した太古の昔はほとんどの動物が四足歩行をしていたはずである。四足歩行の動物が血を吸いに体にたかる蚊を払い落とす手段は尻尾を振り回すことぐらいで尻尾が届く範囲はさほど広くはない。蚊が取り付き安全に血を吸えるゾーンは結構広かったのである。この頃の蚊はかなりの優位性を持って吸血ライフを送れていたのではないかと思う。

やがて地球上には人間という動物が大繁殖し始めた。蚊の誤算はこの人間である。

なんと人間は四足歩行ではなく二足歩行動物である。振り回す尻尾はないが、かなり自由に動く手があるのである。

手はかなりの範囲をカバーできる上に、器用な人間であれば空を飛ぶ蚊すら撃破してしまえるのである。蚊の立場から見れば、四足歩行の動物の血を吸っていた時代に比べて二足歩行の人間の血を吸う現代はかなり危険度が高いのではないかと思うのである。しかも科学力を駆使した「蚊取り線香」という飛び道具まで駆使してくるのだから蚊にとって人間は非常に厄介な吸血対象だろう。

そんなことをぼんやりと考えていたら、数少ない人間のウィークポイントである首筋を狙いにくる蚊の気持ちもちょっとわかるような気がする。

それにしても、痒い。

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